東海岸の交通の要衝
現在の国道5号線の終点出口があり、蘇花改公路(台9線蘇花公路山区路段改善計画)の起点でもある蘇澳は、台2線と台9線が交わる場所でもあり、さらに十大建設の一つとして建設された蘇澳港がある。蘇澳は昔から台湾東海岸の交通の要衝だったのである。
「今年は鉄道‧宜蘭線が開通して100周年になります」と荘文生は言う。1924年に開通した宜蘭線は、台北と宜蘭をつなぐ鉄道で、間に立ちはだかる雪山山脈に遮られることなく便利に行き来できるようにした。
蘇澳と花蓮をつなぐ蘇花公路の起点でもあるため、昔は花蓮へ向かう人は蘇澳に一泊して早朝に出発するバスの金馬号に乗る必要があった。そのため蘇澳駅の周辺には旅館が建ち並び、多くの人や車が行き来していた。
1980年以降は、蘇澳と花蓮を結ぶ鉄道北廻線が開通し、蘇澳新駅が設けられた。これにより従来の蘇澳駅には各駅停車の列車しか止まらなくなり、蘇澳駅周辺はしだいに衰退していった。
しかし、交通輸送の古い施設から往時をしのぶことができる。荘文生は私たちを鉄道蘇澳線の行き止まりにある扇形転車台(ターンテーブル)に案内してくれた。現在の列車は運転席が前後についているが、昔の列車は一方向にしかなかったため、転車台を用いて方向転換する必要があったのである。この施設は現在では貴重な文化遺産となっている。
扇形転車台から海の方向を見ると、鉄道の軌道が途切れていて、その先の突き当りに「蘇東隧道(トンネル)」の文字が見える。かつて蘇澳駅と蘇澳港の間を行き来していた鉄道の跡だ。かつて鉄道から貨物船へと貨物が積み替えられ、蘇澳港から出ていった様子がイメージできる。トンネルは今ではサイクリングコースの一部になり、中に入ると海底の絵が3Dで浮かび上がり、人気の撮影スポットとなっている。
魚雑(魚の内臓)の燻製は蘇澳ならではのローカルフードだ。