移りゆく大稻埕
お薦めのカフェを呉勝文が紹介してくれた。「孵咖啡-孵咖啡洋館」(孵咖啡洋行FU COFFEE2号店)という歸綏街にある昭和風のカフェである。階段で2階に上がると、店の中はたくさんの骨董品や古物で飾られていて、黄昏色の照明がノスタルジックな思いとともに、古き良き昭和の時代へとタイムスリップさせてくれる。レトロ情緒と趣ある家具に囲まれて、モザイクなテーブルランプの明りの下では、友人とコーヒーを片手にする歓談も弾み、店内の自家製コーヒーやスイーツ、軽食はアフタヌーンのお供になってくれる。
他にも、DoGa台北迪化店というネット販売で商品が売切れてしまう有名店もある。サクサクした食感の唐辛子を使ったスナックは海外にも輸出されている。古い歴史のある大稻埕の街中で、DoGaはまるで流行ブランドショップのようでもあるが、少しの違和感もなく融合している。また、文創(伝統や文化を取り入れた新しい創作)のブランド「印花樂」は、旅行客向けにシルクスクリーンのプリントサービスや体験教室を開いていて、台湾ならではのプリントアートを楽しむことができるという。
大稻埕は、郭雪湖の『南街殷賑』によって時を超え存在し続けている。街の繁栄ぶりと豊かさは、百年余り経った今でも変わらない。大稻埕を訪れると、そこでは数えきれないほどの物語が私たちを待っている。街をめぐり、流行の店で買い物をしたり、風情ある路地裏に佇む邸宅を訪れてみたり、カフェの扉を開けてコーヒーを飲みながらノスタルジックな空間に浸るのもいいだろう。また、沢山のスパイスや漢方薬から滋養強壮スープを作るのもいいかもしれない。新旧の融合する大稻埕を堪能してみてはいかがだろう。
百年前の迪化街には米や雑穀を扱う店が集まり、交易が盛んに行われていた。
迪化街のバロック建築から、かつて街が繁栄した様子がうかがえる。
迪化街には数多くの氷店がオープンし、客足が途絶えない。
当時の迪化街は乾物と漢方薬の店も立ち並び、庶民の食材天国だった。
漢方薬は、すでに一世紀前から迪化街で重要な産業として発展していた。