夜市で地元の雰囲気を楽しむ
「子供の頃は鳳山に住んでいて、金曜日の夜に開かれる流動夜市が楽しみでした」と話す馬継康は子供のような笑顔を見せる。翌日は学校も休みなので、夜市へ行ってパチンコをしたり、乗り物に乗ったりして思い切り遊んだそうだ。豪華なものは何もないが、観光客にも幸せを感じさせてくれる場所なのである。
昨今は都市の発展によって夜市の盛衰も速く、突然人気が出たり、急に廃れてなくなってしまうものもあるが、長年にわたって常ににぎわい続けている夜市もある。
夜市で評判になった屋台料理を五つ星ホテルのレストランが取り入れることもあり、シェフが工夫を凝らし、腕を振るう。例えば肉圓(サツマイモ粉の皮で肉餡を包んで蒸したもの)にアワビや貝柱を入れて高級料理にしたものもある。だが、馬継康は、これでは屋台料理の特色と意義が失われてしまうと考える。
「屋台料理の特色は、量は少なめで安いことにあり、夜市の価値は地に足がついてる点にあります」と言う。街の至る所で売られている蚵仔麺線を「高級ホテルで食べても気分が出ません。これは庶民の暮らしから生まれたものですから」と言う。麺線は街角の屋台の椅子に座ったり、立ったまま食べるもので、それが良いのである。
台湾人には常にイノベーションを求める血が流れている。そこから世界を席巻するタピオカミルクティーが生まれ、おいしい大腸包小腸が生み出された。夜市ではこれからも、数々のおいしい料理が誕生することだろう。
台湾を旅する際には、日が暮れたらにぎやかな夜市に足を運んでいただきたい。湯気の上がる屋台で肉入りとろみスープを頼み、小さな椅子に座って思い切りほおばる喜びを味わう。あるいはフライドチキンを買って歩きながら食べ、旅の自由な雰囲気を楽しむのもいい。こうした喜びは、すべて夜市で叶えることができるのだ。
台北の寧夏夜市では、多数の屋台料理を集めた「千歳宴」を打ち出しており、時間が限られた旅行者は一度にさまざまな料理を楽しめる。
夜市には食も遊びもあり、その土地に根付いているので、町を理解する最良の方法と言える。