違う角度から台湾の美を見る
「沈没船は二つの面から見ることができます。一つは歴史物語、もう一つは豊か生態です」と李景白は言う。彼は以前、TLCチャンネルの番組「瘋台湾」のプロデューサーを務め、『水下30米』シリーズでは、台湾、フィリピン、パラオなどの海に潜った。「もし今もサンゴばかり撮っていたら、皆さん、すぐにチャンネルを変えてしまうでしょう」と笑う。
「よく言うのですが、皆さんは何もない荒野の家に住みたいと思うでしょうか。それとも雨風を避けられ、外敵から身を守れる家に住みたいでしょうか」と李景白は言う。魚も同じで、広々とした砂地に沈没船があると、まるで砂漠のオアシスのように天敵から身を守れるため、魚の群れはここで餌を探したり、身を隠したりするようになる。サンゴが繁殖した沈没船に魚がいなければ、その海域は海洋資源の乱獲が考えられるなど、沈没船の姿が自然環境の指標となるのである。
業界で「白叔」と呼ばれる李景白は、漁業署に記録されている沈没船400隻の中から、15隻を選んで映像のテーマとした。そのなかには漁業署が漁場再生のための漁礁として沈めたものもあれば、事故で沈没したものもある。製作機関は3000万元を投じて8Kの映像で撮影し、台湾の著名な編曲家である李哲芸と声楽グループに依頼して『沈睡的水下巨人』の背景音楽も制作した。感動的な音楽とともに「誰もが美しいと感じる最良の映像」で海の底を再現している。
カメラを握った李景白は、水中での撮影はもともと容易ではないと言う。水の流れを克服し、照明器材も自分で持ち、しかも8Kカメラの焦点を合わせなければならず、さらに魚の協力も必要なのである。
そんな彼は、撮影中に魚が協力してくれたことが幾度もあると言う。例えば、東北角の宜蘭萬安艦の船尾を撮影していた時は、想像を超える数のイサキがいて、ツノサンゴも驚くほど密生していた。萬安艦は漁業署が初めて退役した軍艦を海に沈めて人工漁礁としたものだ。「イサキの群れは船尾をほとんど覆い隠すほどの数でした」と言う。この映像は、番組の第5話で流された。
戦車揚陸艦として古寧頭戦役で功を立てた中栄艦も、汚染源となるプリント基板やオイル類を取り除いた後、漁業署によって屏東県車城の沖に沈められた。「中栄艦は、今回撮影した中では最も深い海に沈む船で、魚も驚くべき大きさでした。体長2メートルのハタのほかにコショウダイもたくさんいました」と言う。また、甲板に付着していた埃は、海水に攪拌されることはなく、鍾乳石のようになっていたという。