
台湾で華語を学ぶなら、クラス授業だけでなく、グループ活動や小旅行なども華語力アップに役立つ方法だ。(国立台湾師範大学提供)
スウェーデンから台湾華語を学びに来た留学生ルーカスさんが、台湾に来たばかりの頃のことだ。ドリンクスタンドの行列に並びながら、言い間違えないようにと「タピオカミルクティー1杯、タピオカミルクティー1杯…」と心の中で何度も繰り返した。ところが、いざ自分の番になって無事に注文を終えたと思った瞬間、笑顔いっぱいの店員に「甘さはどうしますか? 氷はお入れしますか?」と立て続けに問われ、思わず言葉を失った。
中国語を学ぶ外国人が台湾独特の言い方に驚かされた話はそれだけではない。「『加熱』も『荷物を取りに来た』も台湾に来てから覚えた言い方で、初めて聞いた時は意味がわかりませんでした」と韓国出身のキム・エウンさんは台湾に来たばかりの頃の苦労について語った。
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キム・エウンさん(左)とスーフィチャ・サイビロンポーンさん(右)は、華語教育センターで中国の伝統楽器・古筝も習っている。
没入型学習で華語を学ぶ
華流アイドルや台湾ドラマが好きだった彼女は、大学時代に中国語を履修したが、習った文法や単語は日常生活では使いにくかったと言う。
そのため、台湾に住み始めたばかりの頃はコミュニケーションに困ることがあった。買い物中にわからない単語があれば英語とボディランゲージに頼らなければならず、英語が話せない店員は手助けのしようがなかった。「でも、言葉が話せるようになると、みなさんが積極的に手助けしてくれることがわかりました」とキムさんは言う。このような明らかな変化が起こったのは、ふだんの練習に加えて、華語教育センターで基礎を身につけたおかげだ。
彼女が学んだ国立台湾師範大学の華語教育センターで使用されている教材には、台湾に入国する際の空港での会話や、夜市で食べ物を買う時に使う「~を一つください」など、日常生活で使う頻度が高い単語や文型、外国人学習者が直面するさまざまな場面で必要な表現が収録されている。
華語教育センター学務組の方淑華組長によると、基礎的な会話能力を身につけたら、夜市や市場など実際にその表現を使う場に行って、学んだ表現をどんどん使ってみるよう、教師たちは学生に働きかけているという。このような練習をして、はじめて学生たちは台湾生活に対応する力を身につけることができるからだ。
オンライン教育が普及した今日でもこのような「没入型学習」は依然人気が高い学習方法だ。
台湾華語教育資源センターの統計によると、台湾に語学留学する外国人学生数は年々増加しており、コロナの影響による一時的な減少もあったが、再び増加に転じて今では年間3万人強となっている。また一般的な華語コースや検定対策コースだけでなく、文化体験や校外活動などを通じて華語を学ぶ選択肢も増えている。
旅行で伸びる語学力
「タイでは台湾への留学や旅行を薦める人が多いんです。だから私も台湾に来ました」。台湾の大学院で理学療法を学ぶために、タイからやってきたスーフィチャ・サイビロンポーン(Supitcha Saiviroonporn)さんは、まず語学センターで華語を学ぶことにした。
「ひと月で自分の変化に気づきました」と彼女は言う。タイで1年半授業を受けたが、台湾ではずっと短い時間で上達したと感じられたのだ。
スーフィチャさんは華語の上達には旅行が非常に役立ったと語る。「私は観光案内に書かれていないようなところに行くのが好きなのですが、中国語が話せるようになったおかげで、よりディープな街歩きができるようになって、タイ人が知らないものを見られるようになったし、台湾の人とおしゃべりをする中で、それまで知らなかった人や物事についての知識も増えたんですよ」。
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何度も繰り返し練習したおかげで、繁体字(正字)も難なく書けるようになったスーフィチャさん。
流されるまま語学ロングステイ
ドリンクスタンドで台湾華語の洗礼を受けたルーカスさんは、台湾を紹介するユーチューバーになった。
2018年、彼は本名のルーカス・エングストロム(Lukas Engström)名義でYouTubeチャンネルを開設し、象山、三貂嶺、平渓などの観光スポットを訪れるなら、どんな公共交通機関を利用して行くか、またどんな旅行ルートがお薦めかなど、外国人観光客の視点から詳細に紹介したところ、その実用性から、多くの人に支持された。
ルーカスさんは10年あまり前に交換留学生として台湾にやって来た。「中国語学習にそれほど時間をかけることはない」と大学の先生に言われたことから、あまり熱心には勉強しないまま留学を終えてスウェーデンに戻ったが、1年後、台湾に舞い戻り、台湾師範大学の華語教育センターに入学した。それは単に当時付き合っていた台湾人の恋人のためだった。
当時、どんな授業を履修するか、休日にどこに遊びに行くかから、中国語を学ぶことにした理由まですべて「友達に付き合った結果」だったそうで、当初、留学は1年だけの予定だったが、なんだかんだと延長を続け、いつのまにか台湾訛りの中国語がすらすら話せるようになっていた。そして、気が付けば友達と一緒に台湾各地を訪れ、台湾の多様な文化を体験していたのだ。
華語教育センターで2年半学んだ後は、バイト生活を送るようになり、余暇はゲームばかりして「台湾はつまらない」と思うようになっていたルーカスさんは、5年前のある日、スウェーデンに帰ることを決め、アクションカメラ「GoPro」を購入した。それは帰国前に好きだった台湾の景色を記録し自分の思い出とすると同時に、師範大のドラゴンボートレース・チームの仲間にシェアするためだった。「僕は台湾に5年あまり住んでいて、一般の外国人より滞在期間が長いので、どこに遊びに行ったらいいかとか、何が美味しいかとか、留学生仲間によく聞かれたからね」。そして、カメラを手にした彼は、かつて友達と一緒に行ったところを再訪し、あらためて自分は台湾が好きだということに気づいたのだ。
ルーカスさんが台湾に残ることを決めた、最後のひと押しはYouTubeの「外国人が紹介する台湾シリーズ」でアップした「茶壷山」の動画だった。たった2週間で再生回数が2万を超えたと知って、非常に驚いたという。だが、もっと驚かされたのはコメント欄への書き込みだった。「たくさんの人が『上の方の景色がこんなにも美しかったなんて!』と「書いていて、『あれ?みんな行ったことないの? ここは僕が一番好きなところなんだ!』と思ったんだ」。そして彼は台湾を紹介するユーチューバーになることを決めた。彼の台湾ロングステイはまだまだ続く。
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台湾の複数の大学に設置されている華語教育センターでは、クラス授業だけでなく、さまざまな体験学習も用意されている。(台湾師範大学華語教育センター提供)
毎日がサマーキャンプ
「外国人が紹介する台湾シリーズ」は中国語字幕付きで、英語を話すルーカスさんが台湾各地の美しい景色を案内するというもので、2年間でほぼ台湾全土に足を延ばした。最近の動画では、台湾旅行を考えている外国人に向けて、必要な事前準備や知っておきたい文化ギャップなどを紹介したり、在台外国人をゲストに招き、台湾のさまざまな姿について語ってもらったりしている。
また、ルーカスさんはEUの出先機関である「欧州経貿弁事処」(European Economic and Trade Office)と協力して、EU加盟各国の駐台機関の代表を招き、それぞれの国の文化や風土を紹介してもらうと同時に、彼らの台湾に対する印象を語ってもらっている。それによって台湾の視聴者はEUの国々に対する理解が深まり、欧州の人々の正直な台湾観を知ることができる。
もしルーカスさんの流暢な中国語が聞きたければ、彼の「在台生活のあれこれシリーズ」がお薦めだ。台湾風の中国語をよどみなく話す彼を見ると、どれほど勉強したらここまで流暢に話せるようになるのかと聞きたくなるが、彼によると「5年は勉強しなければダメだと思っている人が多いようだけど、台湾で暮らせば1年ちょっとでOKなんだ。1、2年あれば日常生活に困ることはないよ」とのことだ。
台湾の華語教育センターで学ぶ単語や表現はすべて日常生活で使え、外国人が本当の台湾を体験するための大きな助けになっていると彼は言う。そして「彼はバイク免許を取得し、公共交通が充実している台北を離れて、あまり知られていない土地へと足を延ばすようになっている。
そんな彼も、時には中国語が全然話せないと誤解されることがある。また、コンビニでは「欧米人はアメリカンコーヒーを飲むものだ」と思われがちで、アイス・ラテを注文しても、アメリカンのホットを手渡されることが何度もあったそうで、在台外国人にはこうしたエピソードは枚挙にいとまがないという。「台湾人は本当に親切で、気を配ってくれるけど、やりすぎの時もあるんだよね」とルーカスさんはニヤッと笑った。
彼は台湾を「ホーム」だと言ったことがない。「まるで13年間続くサマーキャンプに来ている感じなんだ。ここでは毎日のんびりできる。だからずっとここにいたいなぁって思うんだ」。
いつスウェーデンに帰るのか、はっきりした答えはない。「僕は毎年、これが最後の1年だと思って過ごしているんだ。『これが最後の1年だとしたら、何をする?』って自分に問いかけながら」。彼の台湾ロングステイはまだまだ続く。
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外国人学生は古筝、書道、歴史、文学、台湾語(ホーロー語)などのクラスも履修できる。
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外国人学生がチームを組んで端午節のドラゴンボートレースに出場するのが、台湾師範大学の重要な年中行事の一つだ。(国立台湾師範大学提供)
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ルーカスさんのYouTubeチャンネル「外国人が紹介する台湾」のロゴは、ハート型の国旗だ。
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ルーカスさんは10年前、台湾師範大学のドラゴンボート・チームに参加して、たくさんの友達ができた。思い出もいっぱいだ。
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新北市瑞芳に位置する茶壷山は、ルーカスさんお気に入りの絶景スポットだ。(ルーカスさん提供)
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コンパクトな国土に変化に富む地形を持つ台湾は、にぎやかな都市とのどかな農村、さらには緑豊かな山々まで1日で巡ることができ、訪れた外国人を驚嘆させる。(荘坤儒撮影)
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台湾師範大学に隣接する「師大夜市」には万国旗が掲げられ、その下をさまざまな人が行き交う。
