子供たちから無限の愛を教わる
最初の頃は人手も足りず、症状が特に悪い子供もいたため、シスターは夜中でも状態を確認できるよう、彼らを自分の宿舎へ連れ帰って世話をすることもあった。24時間にわたって一緒にいると、具合が悪いかどうかや、病状の悪化も感じ取ることができるようになり、これから子供に発生することを夢に見ることもあるという。まさに母と子の心のつながりである。
母が子供の世話をするのは、その子の成長のためであり、子供が進歩すれば達成感が得られ、苦労も無駄ではなかったと思える。重度の障害を持つ子供については、いまを大切に世話をし、悪化しないよう神に祈る。子供たちは言葉は話せないが、その目や表情から言いたいことを読み取ることができるという。時には子供が泣き続け、どうやってもその苦痛を和らげてあげられず、一緒に涙を流すこともある。
夜間に緊急に病院に搬送する必要もあるため、身長145㎝の彼女も運転免許を取った。背が低いため、ブレーキが踏み込めなかったり、前が見えにくかったりという不安もあるが、子供たちのためにとワンボックスのマニュアル車を運転するようになった。以前は病院までの道に街灯もなく、バイクや自転車が飛び出してくることもあったが、その恐怖と戦いつつ、言葉で子供をなだめながら運転した。
時々、自分は本当に彼らを愛しているのか、と自問することがある。特に自分の体調がすぐれない時などは、今夜は何も起こらずにゆっくり眠らせてほしいと思うこともある。それでも、緊急ベルが鳴ればベッドから飛び起き、頭の中は子供たちのことでいっぱいになる。「私はこの子たちと一緒に成長してきたのです。子供たちは私に、自分で思っている以上の忍耐力を持たせてくれ、自らを捧げさせてくれるのです」と言う。
聖心教養院の子供たちが成長するにつれ、入居が必要な対象は増えていった。2002年、フランツ‧ブルクハルト神父は逝去したが、その最後の願いは、障害者が生涯にわたって入居して介護を受けられる施設をつくることだった。シスター‧メアリーはこの願いを受け継ぎ、嘉義の敏道ホーム(敏道はブルクハルト神父の中国語名)設立のための募金活動に加わり、2009年からは敏道ホームでの仕事を開始した。聖心教養院で成長した子供たちの一部も彼女とともに敏道ホームに移り、彼女が継続して世話をすることにした。5歳の時に聖心に来て、今は29歳の人もいる。
痰が自分で出せない子供にはネブライザー(吸入器)を用いて気道内を加湿し、それからスタッフが背中を叩いて痰を出させる。介護は容易なことではなく、忍耐も求められる。