環境にアートが介入
2011年からキュレーターの呉瑪悧の後押しがあって、竹園地区の河川である樹梅坑渓をテーマにして、芸術家と水を軸に一連のグリーン・アートの行動計画を展開してきた。
スタジオの運営ディレクター李暁雯は、台湾には同じような小さな川が400本余りあるが、十分な関心を寄せられていないので、こういった芸術計画を通じて周辺住民の環境に対する認識と行動を喚起できればという。生活環境に関するテーマに皆が関心を寄せ、環境意識が高まり、身近な小さな川がきれいになれば、大きな川、ひいては海がきれいになる。
山と川、都市と自然の間にあるこのスタジオは、創作活動と運営方針に、環境との対話を主要課題として盛り込んだのである。
「樹梅坑渓の環境芸術アクション」において、芸術家は付近の竹囲小学校の児童を連れて、上流から下流まで歩いていく。その中で、川の色を見て、虫や鳥の声を聴き、見聞きしたところを創作に取り入れるのである。その過程で、実は多くの子供たちは家のそばの渓流をあまり知らないことが分かった。「地元の意識を高めるには、リードする団体が必要なのです」と李暁雯は言う。竹囲小学校では、児童ばかりではなく教師も動かした。先生方はこういった教育方法を継続していき、次の世代にも受け継がせたいとしており、さらに竹囲中学校では「樹梅坑渓クラブ」が学校内に生まれた。
また呉瑪悧は、毎月一回朝食会を主催し、上流から下流までの地域住民に対話の機会を提供している。住民は朝食をとりながら、家の近くの渓流について語り、過去を振り返り、川全体の姿に広げている。朝食会にはスタジオに滞在する芸術家も参加するという。
朝食会では、上流の住民が育てた野菜を特に食材に用いて、季節ごとの地元の料理をメニューに取り入れてきた。これまで1年間、毎月続けてきた朝食会だが、中には文科系の教師や自然保護の専門家、水利整備の専門家も討論に加わり、樹梅坑渓の将来像を具体的に描き出してきた。こういった過程は映像化し、ドキュメンタリー映画を製作している。
バンブー・カーテン・スタジオでは2012年に地域劇場のイベントを開催した。地域のお年寄りの写真や、竹囲地区の物語を聞き取り、これをもとに脚本を仕上げ、現地のお年寄りを指導して舞台に出演してもらった。「誰もがこのアクションの一員なのです」と李暁雯が言う通り、彼らはより多くの住民の参加を目指している。
去年、台湾にやってきたインドネシアの芸術家Agus Tri Budiarto(Timbil)は、化学系の学科を卒業していて、インドネシアの家庭での酒造問題に関心を抱いた。そこで故国にあっては地域で正確な酒造方法を指導していたのだが、そこから水質の重要性を感じていた。水質を鑑定する方法を研究していて、台湾に来てからはニュージーランドの芸術家Andrea Selwoodと共に、竹囲小学校の児童を連れて樹梅坑渓を訪れ、そこでリトマス試験紙や集魚器を使って、水質観察を行ったのである。